手形の喪失
《二代目社長アドバイザー》
★【手形の喪失】
●現在の僕の業界では、仕事柄、報酬を受け取るときも、支払いをするときも「オール現金」であるが、二代目社長であったときは、商売柄(卸売業)「手形」を多く扱っていた。
「手形を紛失した!」
受け取った手形、自社が振り出した(支払った)手形が紛失した経験のある方も少なくはないと思う。
手形という証券の形式を網羅した発行以降の紛失には限らないので、紛失も含めて、法律的には、その「権利」に主眼をおいて「喪失(そうしつ)」と表現します。
二代目社長のときはもちろんのこと、それ以前のサラリーマン時代においても、受取手形を紛失したことは一度もありません。もちろん、海外取引においては、手形の商慣行がありませんので、現金(しかも先払いが商習慣)100%でした。
自社が振り出した手形を相手方が紛失したケースも、二代目社長として8年間経営をした期間において2度体験しただけでした。
しかも、その内の1件は盗難であり、もう1件も支払った先が更に裏書によって支払った相手なので、実質はほとんど遭遇していません。
●自社が振り出した手形を紛失したという支払先が出てきた場合、厳格には、その手形の喪失に関する「公示催告手続」を裁判所に申し出て、2カ月以上の官報公示の後、「除権決定」が下りるのを待ちます。この時点で、初めてその手形の効力が失効することになる。
しかしながら、公示催告手続には「時間」と弁護士等に支払う「費用」が発生することになる。そのため、「高額」でない場合は費用損の場合もあり得るし、また、資金の逼迫している企業には向かない。従って、大企業においては通常そのような厳格な手続きをとるものの、中小企業同士では両社の信義則によって解決するケースが多いであろうと推測する。
その中でも多いと思われるのが、手形満期日+銀行の取立有効期間を過ぎても該当手形が引き落とされなかった場合に、振出先が現金を支払うというケースであろう。
この場合も、支払先(紛失先)から「念書」として一筆(別の手形所持人が表れた場合は、紛失先が弁償する旨)もらっておく必要がある。なぜかといえば、銀行の取立て有効期限が過ぎても、手形、ましてや該当債権債務の時効(失効)期間が残るからである。従って、あまりおすすめはできない。
更に簡便化すると、手形の満期日以前に、再振出や現金支払いを行うケースもあるであろう。支払先が、受け取った手形を再度支払いに回したり、割り引いて資金化することができなくなるのを回避するためである。支払先が中小・零細である場合の善意の行為であるとはいえ、絶対に避けるべきである。なぜかといえば、手形は「所持(提示)」する者が権利者であるという見地から、「善意の第三者」と呼ばれる知らぬ者が手形を提示し権利を主張した場合に、対抗(抗弁)できないからである。そうなると、支払人は二重払いをするはめになる。
いずれにせよ、支払先を思う気持ちはあっても、正規の「除権決定」を得る公示催告手続によることが望ましい。
もし、受取手形を紛失した場合、支払手形を紛失したとの連絡を受けた場合、いずれのケースにおいても弁護士等の法曹家に即刻相談することが大事である。
●さて、ここまでは、経理・財務等の実務者レベルの話。
経営者である二代目社長のあなたは、実務者レベルの話で終わってはいけない。
受け取った手形を紛失することは論外である。
僕は、一度も経験がない。
手形は金銭同等であり、その手形を紛失するということは、最悪、売上がパーになってしまう。仕事を得ることができなかった機会損失ではなく、原価発生後の損失である。すなわち、「原価+経費→全て損失」となる可能性もあるのである。会社にとっては、大損害である。
「ウチは厳重管理しているから大丈夫」
そう。手形を振り出す規模の会社においては、経理担当がいたり、大きな金庫で管理しているケースがほとんどであろうから、受取手形を紛失する可能性は低い。
問題なのは、経理担当もいなければ、金庫もないような零細企業に手形がわたったときのことである。
「でも、それは相手先の問題でしょう?」
いや、違う!
●多くの企業を見てきた僕の体験からすると、支払い先が手形を紛失することが多発する場合、その実、「振出企業の体質」に由来することが多い。
ひとつには、支払先(=取引企業)がルーズな企業と付き合っているという証である。
企業にとっての血液である金銭・有価証券の管理がずさんな企業であれば、当然、仕事そのものもルーズである可能性が高い。従って、そういった企業とばかり付き合っているということは、品質等に大問題があるとの危険信号である。
もうひとつは、自社の管理がずさんなことが多い。
支払先ではなく、「自社」がずさんなことの裏返しであるといえる。
紛失するのは相手先でっても、振出先(支払先)がしっかりと「金銭・有価証券」という<扱い>をしていれば、相手に伝わり、相手も大切に扱う。その逆も成り立つ。
自社の手形はしっかり管理されているであろうか?・・・・・未使用・使用中・使用済は一目瞭然で区分されているか。厳重に管理されているか。扱い者は定められているか。扱い者等の記録は整備されているか。振出・期日等「日付」は完備されているだろうか。空白はないか・・・空白は二流の証。
支払うときに、しっかり受け渡しの記録や領収証との交換原則を守っているであろうか?郵送するならば、書留にすることはもちろんのこと、未着をフォローしているであろうか?
などなど、「金銭同様」の管理がされていないことが多い。「手形は、発行しなければ紙切れ」ぐらいに思っているケースが多い。
支払う側が、大事に取り扱えば、受け取る側も大事に扱う。
支払う側が、ずさんであるからこそ、受け取る側もずさんに扱うのである。
二代目社長のあなたは、今一度「自社」における手形の扱いをチェックする必要がある!
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コメント
公示催告の手続自体はそんなに難しくありません。申立書に必要事項を記入して、陳述書に手形を紛失した経緯などを記載、あとは当事者目録等を添付するだけ。管轄の裁判所に聞けば丁寧に教えてくれます。
ただし、小さい裁判所はあまり扱ったことがないので、担当の人もよく分かってないこともあります。
東京地裁の場合は、申請書のチェック、官報への公告を2回、などで除権判決までに正味8ヶ月くらいかかります。ご参考まで。
投稿: 代書や | 2008年3月27日 (木) 21時29分
代書やさん、おはようございます。
さすが、本職ですね。
こういう事態は、本職に相談するに限ります。
私の出番は、再発防止の社内体質改善にあります。
投稿: リハル | 2008年3月28日 (金) 07時14分