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『決断力』

《あしたのための読書:思考法編》

★『決断力』 羽生善治氏著

●先日、将棋の名人位に返り咲き、見事<19世永世名人>の称号を獲得した羽生善治氏。

1996(平成12)年、「永遠にありえない」とされていた棋界のビッグタイトル<七冠>全ての同時ホルダーとなった。

当時はまだ20代。それから10年近くを経た2005(平成17)年7月に本書の初版が出版された。

幼いときから将棋と共にあった生活。師匠・二上達也棋士の教え。かつての英雄・大山康晴棋士や初めて名人に就いたときの米長邦雄棋士との対戦。そして、将棋界の一時代を共に牽引してきた谷川浩司棋士との対戦。

七冠ホルダーの栄誉とプレッシャー。

30代になり、20代のような聡明な頭脳の陰りを自覚している状況にあって、あらためて将棋は「経験」による「心・技・体」が必要でることを再認し、これまでの戦いを振り返って気付いたことを記した書であるといえる。

現在20版以上増版されている人気書のひとつであることが納得できる良書である。

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●冒頭に羽生棋士が影響を受けたと思われる人々を記したが、本書は著者の半世記ではない。

「羽生マジック」と呼ばれる妙手で数々のタイトルを獲得した多くの経験から、著者の勝負に対する<思考>を記した書である。

パソコンを屈指した「新人類世代」と呼ばれた羽生世代は、羽生善治・現名人以外にも、森内俊之・前名人や、佐藤康光・元名人など、多くのスターを輩出した世代である。

 

●パソコンを屈指して、連戦連勝であった20代。

その頃は脳も肉体も若く、どれだけでも棋譜を覚えたり研究したりできたという。

ところが、30代になり脳も体力も陰りを見せ、従来の「詰め込み型」の思考から、「経験」を活かした思考に変えていかなければ、これから先も第一線では勝つことができないと考えたのが、本書を出版した四冠時代であった。

「経験による思考」ってなんだろう?

PCの進化した現代にあっては、新戦法は一夜にして情報が公開され、翌日には対処法が研究され尽くす。

そんな時代背景にあっては、昔のように将棋盤を前にして「作戦」を考えたのでは勝つことは無理なのがプロの世界。

そういった「情報」「準備」に対して、筆者は「時代に即した勉強法」を心掛け、「選ぶ情報と捨てる情報の取捨選択」が重要であると述べている。

「勝負の3割以上は事前準備の差」・・・1手差なら相手のミスで追いつける。2手差なら絶望的。そんな僅差のプロ同士の勝負において、3割以上の差を感じているということは、いかに事前準備が大切かを物語っている。

 

●勝機は誰にもある!

「1手詰」(その1手を差せば勝ち)という場面を見逃したことがあるという。

将棋界の歴史に名を残す羽生棋士でさえそんな「ミス」を犯すのであるから、僕のような凡人には日常茶飯事であろう。

つまり、あきらめない限り、誰にでも勝つチャンスがあるということだ!

ただし、ピンチだからといって闇雲に攻めたのでは負けるに決まっている。・・・逆も真なり。守ってばかりでは、勝機が訪れることはない。

勝利する過程には、常にリスクがつきまとう。

そこで重要なのが、「大局観」である。

書籍かインタビューかは忘れたが、羽生棋士は「盤面を”図”で見ている」ということを聞いたことがある。

その時点だけの盤面を見てもピンとこないが、対局開始から場に居合わせると、勝負の「流れ」を感じることができるのだそうだ。・・・そこから感じるのが「大局観」。

・・・・・二代目社長のアナタも、会社のデスクから指示を出すばかりでは「大局観」は養えない。「前線に立つ」からこそ、勝機の気運を感じることができるのである。

そして、実際の対局になると、その「大局観」や「流れ」を感じ、攻めるときは攻める、守るときは守る、ということが勝敗を決するのだという。

 

●誰でも歳をとる。

誰でも、脳や肉体の衰えを感じるときがくる。

そのときに再び第一線で活躍できるか否が「経験の差」である。

「ゼロ」と「1」の差は、とてつもなくデカイのだ。

 

経験とは、「知識」を「知恵」とすることである!

 

しかし経験とは、「成功したこと」ばかりではなく、同時に「失敗したこと」が身に染みているということでもある。

従って、多くの人は「あのときに○○して失敗したから」とか、「○○しても無駄だ」とかいったネガティブ志向になってしまう。

これも歳をとったときの<壁>のひとつであり、歳をとっても活躍するためには乗り越えなければならないことだとも筆者はいう。

そこで必要なのが「勝負どころではごちゃごちゃ考えずに、単純に考える」ということだ。

その「ごちゃごちゃ」考える内容を体験しているのが経験者であるので、「経験を活かす」とは<直感>によってシンプルな方法を見出すことであるともいえる。

 

Keep it simple , stupid : もっと簡単にやれ、バカモン! (KISSアプローチ)

 

ということだ。

 

●経験を積むとは、知識を知恵にすることである。

大局観と流れを身に付けることであるともいえる。

勝機は誰にでも訪れる。

そのためにも、日頃から感性を磨き、その時運が察知できるようにしていなければならない。

「才能」とは、継続できる情熱である。

そして、勝負どころと感じたときには、シンプルに実行する。

それを決するのが【決断力】と【集中力】である。

 

●おすすめ度→★★★★☆

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