『白昼の死角』
《あしたのための読書:エトセトラ》
★『白昼の死角』 高木彬光氏著
●最近、昔の<名著>にふれてみたい心境である。
「あの作品って、昔耳にしたけれど、そういえば読んだことがなかったなぁ・・・」
そんな著を探して書店をぶらついた。
先日、『ジェネラル・ルージュの凱旋』を紹介した。
今風にいえば、<ミステリー>のジャンルになるのだろうが、今では影をひそめた<推理小説>に足が向かった。
そこで手にとったのが、本書。
●舞台は、戦後間もない昭和20年代初め。
著者の高木彬光氏が、実際に偶然出会った”天才的知能犯”の実話がモデル。
当時は戦後復興期のどさくさに紛れて、”経済犯罪”とくに”詐欺”が横行した時代である。
本書の題材は「手形詐欺」が主流であるが、現代の複製防止技術の発達や警察・銀行能力の向上からは考えられないような舞台・手口が語られている。
●本書は実話をモデルにし、推理小説といっても”犯人”は分っている。
いわば、犯人目線の回顧録である。
「犯人が分っている推理小説?」
最初はそう思っていたが、読み進めるにつれて、犯人の犯罪心理や次の展開など、今でいえば<サスペンス>の趣きがあり、次々と物語の中に引き込まれていく。
●本書の初版は、1960(昭和35)年。
海外では、アルセーヌ・ルパンなどの<悪党小説>が産声をあげた時代であるが、日本においては、まだまだ<推理小説>どころか<探偵小説>であった時代である。
そこに当時まだ稀少であった”経済”という要素を加え、戦後の表と裏を絶妙に織り交ぜた作品に仕上がっている。
その後は、1979(昭和54)年に映画化され、大ブームを呼び起こした作品である。
当時の僕は、まだ15歳。だから生の映画を観た記憶はないが、おそらく広告が盛んにおこなわれていたのだろう。題名が記憶に残っていたひとつであった。
次は、何を読んでみようか・・・・・また書店をぶらつくのが楽しみである。
●おすすめ度→★★★★☆
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●850ページもあるので致し方ないのであろうが、文庫本なのに1,200円もした。
知らず知らずの内に、文庫本って高くなっていってますよね・・・。
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コメント
「白昼の死角」は私が法律に興味を持ったきっかけになった作品です。初めて見たのは小学生のときでした。大げさに言えばもしこの作品に出会わなければ、人生が変わっていたかもしれません(笑)。
たしかに、現代ではありえないような犯罪ですが、しかし主人公鶴岡七郎の行動力や考え方は読んでいてワクワクしてきますね。
投稿: 代書や | 2009年3月13日 (金) 20時04分
代書やさん、お久しぶりです。
戦後どさくさの時代の話であり、「今では考えられない」犯罪ですが、その表面的事項は今の警察力では無理としても、この”混沌”とした時代においては、ベースに宿る心理は共通するものがあり、この時代風の”経済犯罪”が勃発しだしていますよね。
「高額配当」と謳った資金集めの中には、確信犯的な輩もいるはずです・・・。
投稿: リハル | 2009年3月14日 (土) 09時28分